大谷翔平選手のバッティングを分析① 打球速度と角度 フライボール革命とバレルゾーン(ホークアイ)
2021年シーズンの大谷翔平選手はピッチャーとバッターの二刀流として素晴らしい活躍をされました。中でも日本人選手が40本以上のホームランを放ちホームラン王争いをするという事は誰も想像してこなかった事でしょう。大谷翔平選手自身も今年の成績で基準が出来た旨をお話しされていたので2022年シーズンも更なる期待が持てます。そんな大谷翔平選手ですが、スイング軌道とバッティングスタイルを従来の物からさらに変化させ、俗に言うアッパースイングに見えるスイングをされています。メジャーリーグではフライボール革命とも言われ、ホームランの数が急増し、共に三振数も増加している傾向にあります。
今回は大谷翔平選手も意識して実践されたフライボール革命やバレルゾーンから見る適切な打球角度と打球速度との関連性についてお話をしたいと思います。
ホームランを打つために必要な事
ホームランを打つために必要な要素として、「バレルゾーン」、ホークアイの「ハードヒット」「スウィートスポット」が上げられます。打球速度、打球角度といった2つの言葉からこの3つ要素について解説をしたいと思います。
バレルゾーンとは
バレルゾーンとは、特にホームランや長打が出やすいとされる打球速度と打球角度の範囲を指します。打球速度が約158キロ以上からパレゾーンが出現して、その時の打球角度は26~30度になります。約187キロ以上の打球は打球角度の幅が広がり8度~50度とされます。この事から打球速度が上がれば上がる程、ホームランになりやすい打球角度の幅が広がり、打球に角度が着くと打球速度が速くなくてもホームランになりやすいという事になります。
ホークアイ(ハードヒットとスウィートスポット)
ハードヒット
バントとファウルを除く全打球のうち、打球速度が95 マイル毎時(約 153km/h )以上となった割合。2020年の統計では、ハードヒットの打球は打率 .614 、非ハードヒットの打球は打率 .264 だった。
スウィートスポット
バントとファウルを除く全打球のうち、打球角度が8 度以上、かつ 32 度以下となった割合。2020年の統計では、スウィートスポットの打球は打率 .618 、非スウィートスポットの打球は打率 .220 だった。
出典:https://www.yakult-swallows.co.jp/pages/info/players/hawkeye
この事から打球速度を上げて、打球角度をつける練習をするとホームランを量産するための重要な要素だという事がわかると思います。
大谷翔平選手とメジャー、NPB選手の数字
大谷翔平選手は2022年シーズンは46本塁打を放ちましたが、バレルゾーン率がア・リーグ1位となる12.2%の数字を残しました。ちなみにメジャーリーグトップの数字はタティスJr.(パドレス)の12.8%になります。
また、打球速度はMLBでは平均142.1km/hという数字となっていますが、大谷翔平選手は平均151.1km/hの数字を残しました。ちなみにホークアイのデータをヤクルトスワローズが一時期データを公開してくれていましたが、チームの平均打球速度は137.5km/hとなっており、チームトップは村上宗隆選手の148.5km/hになります。村上選手の数字もメジャーリーグではトップクラスに迫るレベルであります。メジャーの打球速度1位はジャッジ(ヤンキース)の154.2km/hとなります。
ホークアイのハードヒットの観点からいうと打球速度が153km/hを超えるとヒットになる確率が6割を超えるため、150km/h辺りがヒットと長打が量産できるラインになりそうですね。またスウィートスポットでは打球角度は8°〜32°でヒットの確率が6割を超えるとデータが出ています。
ヒットとホームランが出やすい条件
このデータから分かること、私たちはどう生かしたら良いの?
しかしこのレベルの話はメジャーやNPBのトップクラスのお話になります。この事を一般の人に当てはまると打撃速度は身体的能力や筋肉量にも依存してしまうため、150km/hの打球をすぐに飛ばす事は難しいです。しかし、打球角度については打ち方やスイング軌道を意識するだけである程度の反復で身につくことだと思います。また正しいスイングと打ち方を身に付けると自ずと打球速度も上がってきますのでホームランを打つ事もそんなに難しい事ではなくなってきます。打球速度と打球角度をつける技術を比例して向上させる意識が必要になりますが、まずは打球角度が一番取り組みやすく、体に染み込みやすいという事でフライボール革命という言葉が浸透したのではないかと思います。
そして、一般の方がすぐに実践できるホームランを打つための打球角度について東大野球部出身の齋藤周さんが研究してくれていました。打球速度が上がらないとその分、ホームランになりやすい角度の幅が狭まる事と高いフライを上げてしまうとホームランになる確率は非常に下がる事を証明してくれています。結論から述べますと打球速度140kmに満たない打球を放つ場合はバレルゾーンである打球角度30°で放ってもスタンドまでは届きません。齋藤周さんのデータでは140km/h程度の打球速度では打球角度14°の打球が1番ヒットになる確率が高いとの事ですが、この角度ではライナー性のためスタンドまでは届きません。そのためスウィートスポットの最高点となる32°、158km/hから出現するバレルゾーンの30°と齋藤周さんの出した14°の中間となる23°前後の打球角度が一番目指すべきポイントになるのかなと思います。
ちなみにこれは大谷翔平選手の打球角度21°、打球速度188km/hのホームランです。
今回はフライボール革命とバレルゾーンという観点からホームランを打ちやすい打球速度と打球角度についてお話しをさせて頂きました。次回はこの理論を生かすためにどのようなスイング軌道が理想なのか、どういった意識付けと練習方法が有効なのかを大谷翔平選手のバッティングフォームを紐解きながらお話しをしていきたいと思います。
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