イチロー式セカンドベースへの走塁 智弁和歌山への教え

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イチロー式セカンドベースへの走塁 駆け抜けた方が早い 

 イチロー選手は引退してから、全国の高校を周り技術指導をしています。初めての指導校は智弁和歌山高校で3日間の合同で練習、技術指導を行いました。

 最後のミーティングではイチロー選手から「見てるよ、ちゃんとやってね」と念を押され、イチロー選手との練習期間を終えても、智弁和歌山高校はイチロー選手の教えに沿って練習を続けてきました。そして、その年の2021年甲子園大会では見事智弁和歌山高校が優勝を果たし、イチロー選手の指導がそのまま生かされる結果となりました。

 そんなイチロー選手が智弁和歌山高校に授けた一つの走塁技術があります。それは二塁への駆け抜ける走塁です。駆け抜ける事ができる一塁ベースと違い、二塁ベースを駆け抜けてしまうとタッチアウトとなるため、野球の歴史が始まってから誰もしたことの無い前代未聞のプレーですが、果たしてそのプレーにはどのような意味があるのでしょうか。今回は二塁ベースの駆け抜けについて解説をしたいと思います。

常識を打ち破る話題のプレー

 まずはこのプレーを見てもらいのですが、2点リードの八回2死一、二塁の場面。バッターの打球は三遊間のゴロになりました。遊撃手がフォースプレーを狙って二塁へ送球することは当たり前のプレーですが、一塁ランナーは二塁に滑り込まず、ベースを蹴って三塁へ向かいました。判定は間一髪でセーフ(記録はフィルダースチョイス)に。駆け抜けたランナーが挟まれる間に二塁走者が生還し追加点をあげました。

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このプレーを成り立たせるために必要な根拠となるものがあります。

ベースは滑り込むより駆け抜けた方が早い
2アウトであるため二塁でアウトを取られた時点でチェンジになってしまう
得点圏にランナーがいる

以上3つの事が今回のプレーにあたってとても大事な要素になります。

ベースは滑り込むより駆け抜けた方が早い

 イチロー選手は現役時代から再三、一塁へのヘッドスライディングは駆け抜けた時よりスピードが落ちる事を訴えてこられました。実際にスライディングをする事で多少なりともブレーキがかかり、スライディングの体勢に入る時も若干のタイムロスがあります。そのため、スピードに乗りそのまま駆け抜ける方が早いという事はなんとなく想像できますね。

 しかし、その理屈が当てはまるのは一塁ベース上だけの話です。二塁、三塁ベースは駆け抜けは進塁の意思があり離塁したと判断され、野手にタッチされるとアウトになってしまいます。本塁も最近はキャッチャーのブロックプレーは禁止になりクロスプレーは減りましたが、キャッチャーとの接触の恐れもあり、タッチをかいくぐるスライディングが有効になる時が多くなります。二塁ベースを駆け抜ける事は野球の常識で言えば凡ミス、ご法度プレーになりますが、智弁和歌山高校はその常識を覆しました。

二塁でアウトを取られた時点でチェンジになってしまう

 そこで大切になる要員が2アウトという状況です。今回の場面のように2アウトでランナーが一塁にいる場面で内野に打球が飛び、一塁より二塁が近い内野手は二塁でフォースアウトを狙いにいきます。本来は二塁がアウトになる確率は高く、攻守交代になるのですが、イチロー選手はこの場面をうまく利用する事を考えました。二塁ランナーがアウトになってしまえばどの道、自分達の攻撃が終わってしまう。それならば律儀に滑り込まなくても駆け抜けてみてセーフを狙ってみるのも一つの方法なのではないかという、今までにない発想を実行しました。

 しかし、二塁でセーフになったところで駆け抜けてしまえば離塁となってしまいます。再度タッチされてしまえばアウトになってしまいます。それでは意味がなく、むしろ滑り込んでもセーフだった場面で駆け抜けてしまえば罰金もののプレーになってしまいます。

得点圏にランナーがいる

 そこで他にランナーが得点圏にいる事が大事なポイントになります。今回のプレーの起きた場面は2死一、二塁です。この一塁ランナーがベースを駆け抜けてタッチアウトになる前に二塁のランナーがホームインした事により追加点が入りました。

 本来、ベースを踏むフォースプレーはアウトの宣告がある前に他のランナーがいくら早くホームを踏んでも得点は認められません。例えば、2死三塁の場面でバッターが内野ゴロを打ったとします。三塁ランナーは足が速く、内野がもたついている間にホームを陥れてもバッターランナーが鈍足で一塁でアウトになりチェンジになってしまうと得点は認められません。これはランナーが詰まっている場面で二塁、三塁でフォースアウトになっても同じです。

 しかし、タッチプレーの場合は実際にバッターランナーや他ランナーがタッチをされてアウト宣告をされる前にランナーがホームベースを踏むとその得点は認められます。よくあるプレーとしては、2死二塁の場面でバッターがセンター前にヒットを打ち、二塁ランナーがホームインした時、外野のバックホームの隙を狙ってバッターランナーが二塁に向かいタッチアウトチェンジになってしまっても、二塁ランナーが先にホームベースを踏んでいれば得点は認められます。

 このルールを利用して、一塁ランナーがフォースアウトでは得点が認められないため、駆け抜けて二塁セーフを狙い、タッチプレーの間に得点圏のランナーがホームを陥れるという頭脳プレーが成り立ちました。またこのプレーを想定して一塁ランナーは少しでもセーフの確率を上げるためリードを大きく取っていたとのことです。

まとめ

①ベースは滑り込むより駆け抜けた方が速い
②どうせアウトを取られて攻撃が終わってしまうのなら、駆け抜けてセーフを狙ってみる。(敵にワンプレー増やさせてミスを誘う)
③タッチプレーに持っていきその間にホームインを狙う。
 このように野球には予想がつかないプレーで相手のミスを誘ったり、状況判断が難しいプレーで野手を困らせたりとルールの盲点をつくプレーがたくさんあります。イチロー選手はホームランや三振など淡白なプレーだけではなく、野球は頭を使うことが醍醐味だというお話もされています。もちろん、打球を遠くに飛ばす力や速い球を投げる能力も必要ですが、このように頭を使うことでプレーの幅が広げることができるのが野球のおもしろさかもしれませんね。
 
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