和田一浩中日ドラゴンズ1軍打撃コーチの指導方針 教えないの真意とは 現代野球との擦り合わせ

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和田一浩中日ドラゴンズ1軍打撃コーチの指導方針 教えないの真意とは 現代野球との擦り合わせ

2022年のオフシーズンに和田一浩さんの中日ドラゴンズの1軍打撃コーチ就任の発表がされました。

 和田一浩さんは独特なオープンスタンスとダウンスイングが特徴的で、ライナーでスタンドまで運ぶホームランを量産し、通算で319本塁打の実績を残しました。またアベレージも非常に高く、首位打者も経験し確実性も高いバッターとして活躍されました。現役を引退し、コーチ経験の無い和田一浩さんですが、コーチ就任会見で、選手には「こうしなさいと言わない、教えない」という方針をコメントとして残しました。この真意は一体どのようなものなのでしょうか。

時代と共に野球の指導方針の変化と和田一浩さんの考え

 今までの野球の教え方として、基本的な技術を反復させ、間違った動作をした時はコーチが指摘し、技術が定着するまで同じ事を繰り返すという方法が主流でした。この方法は現代野球においても、大きく逸れた考え方ではありませんが、問題は、コーチと選手の相性によって、自分に合わないものを強いられてしまったり、出来ないことに着目され、選手自身の長所を失ってしまうというデメリットがありました。そのため選手自身もある意味コーチの言う事を受け流したり、自分に合わないと感じていても、初めはコーチの言う事を聞き、気付かれないように徐々に自分なりのアレンジを加え、自分の感覚として落とし込むというように対応されていた選手が多くいたと思います。

しかし、その反面、指摘、矯正されたことで自分のバッティングフォームを崩し、選手としての可能性を閉ざした人も多くいると思います。

 時代の流れにより、個人の個性を尊重され、矯正、指導、指摘という手法は受け手である選手の個性を潰してしまう恐れがあるという考えも浸透し、選手自身もそのような指導、教育を受ける経験が少ないため、以前のような手法を取ると指導者と受け手に摩擦が生まれてしまいます。

 以上の事を総合すると、選手に技術を教え込むという方針ではなく、共に検討していく、成長の過程のためにヒントときっかけを与えるというスタイルが、選手に寄り添う1番の方法になり得ると思います。和田一浩さんはこのスタイルで指導を行うという意図を込めて、「教えない」という言葉で表現し、自身の指導方針を打ち出しました。

新しいスタイルの懸念 

 しかし、選手個人の個性を尊重するという考え方に対して懸念される部分もあります。それは選手が自己判断で技術習得を行うため、取捨選択が結局本人次第になり、方向修正が逆に柔軟に行われない可能性もあるという事です。最近の指導者が懸念している事としてインターネットなどで得た情報を拾い集め、反復を怠って、身に付かない内にあれやこれやと自分のフォームを変えてしまったり、コーチの提案した事を受け入れず、継続しないまま諦めてしまうという事も起こっています。この事により、自己責任という言葉が重くのし掛かり、教育と下積みを経験しないまま選手生命を終えてしまう事態も想定されると思います。

 このような事が起こらないよう、全てを選手個人だけに任せるのではなく、和田一浩さんが掲げた方針のように、強制しないで選手が活躍できるように導くという事はこれからの野球界の発展のために必要なことになると思います。「自分で理解して、練習して、実戦に生かさない事には自分に身につかないという事は十分感じてきた」という和田さんの言葉の通り、このような過程を選手が通れるよう意見交換を行い、個人と指導者がバランスよくお互いのスキルのために寄り添いながら共に発展していくという姿勢が大事なのかもしれませんね。

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