根尾昂 投手転向 将来の選手像について考察 長所と短所をどのように複合するべきか 中日ドラゴンズ

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根尾昂投手転向 将来の選手像について考察 長所と短所をどのように複合するべきか 中日ドラゴンズ

2022年交流戦明けの6月13日、中日ドラゴンズが根尾昂選手を投手登録することを発表しました。

シーズン途中の異例の配置転換に周囲を驚かせ、賛否両論を巻き起こす事態となりました。

春キャンプからプルペン入りし、今シーズン、一軍の公式戦で2度の登板があった根尾昂選手ですが、果たして今シーズンの投手転向は誰も予測しなかった事だと思います。

これからの根尾昂選手の将来の選手像が想像つかず、不安を覚えるプロ野球ファンの方も多くいらっしゃると思います。果たしてこれから根尾昂選手はどのような選手になっていくのでしょうか?

解説者の意見や今までの動向から根尾昂選手の将来の展望について考察したいとおもいます。

根尾選手の投手転向に賛否の声

根尾選手は2018年にて4球団競合の末、中日ドラゴンズにドラフト1位で入団しました。入団当時は当時からレギュラーショートであった京田選手のコンバートも囁かれ程、ショートでの活躍を期待され、投げては150キロを超えるストレートを投げるため、強肩を生かした守備も持ち味であり、二刀流も期待するファンも少なくはありませんでした。

中日ドラゴンズは、ショートでの起用を計画し、1、2年目は2軍で経験を積ませ、3年目からは出場機会を増やすため、1軍にて外野手として起用し。72試合に出場しました。

中日ドラゴンズは今季、立浪新監督を迎え、根尾選手の強肩を生かした守備力を生かすため、外野手としての起用し、京田選手をレギュラーショートで使うことを決定しましたが、京田選手の不振により、5月に再度、ショートへコンバートを命じられ2軍での調整を強いられました。その際に一度、イースタンリーグ公式戦、対阪神戦にて、甲子園球場のマウンドに上がり、周囲を脅かしました。その試合でも根尾選手は150キロのストレートを投げ、ピッチャーとしての能力が衰えていないことを周囲に知らしめ、その後に1軍に帯同し、ベンチを温める日々が続きましたが、5月21日の広島戦にて中日ドラゴンズ8点差ビハインドの試合で8回に登板し、1イニングを無失点、5月29日の対オリックス戦にて1イニング無失点と見事投げきり、投手としてのポテンシャルを見せつけました。

これまでの動向を見ていると、根尾選手をどのポジションで起用するのか心配する声が多く聴かれる中、本格的な投手としての起用を想像する人は少なかったと思います。まして、今シーズン中の投手転向を誰もが想像せず、根尾投手の投手転向の発表は当然賛否両論様々な意見が飛び交っています。

しかし、根尾選手を期待する気持ちは多くのプロ野球ファンが共通して持ち合わせている気持ちです。中々起用方法も定まれず、今後の動向が気になる根尾選手ですが、それでは実際に根尾選手はどのようなタイプの選手として育成することが望ましいのか、投手起用を本筋において、根尾選手の将来像を検討していきたいと思います。

”投手”根尾昂の能力

根尾選手は中学時代から140キロを越すストレートを投げ、大阪桐蔭高校に進学後もショートを守りながら、投手としても活躍し、2017年春、2018年春の甲子園の優勝投手となりました。当時から、大谷翔平選手に継ぐ、二刀流選手として期待され、プロに進んだ後に根尾選手をどのように起用していくのか意見が割れていました。

根尾選手の持ち味は伸びのあるストレートで、元々は回転数の多いボールを投げ、ピッチャーとしてもある程度完成された選手でした。しかし、野手としても、ショートも守れる、強肩、俊足、強打と3拍子揃った選手であったため、各球団それぞれ根尾選手を野手として評価していました。そういった中、今回の投手起用の報道について、各プロ野球解説者の方々は根尾選手の将来をこのように評価されています。

投手としての周囲の評価

大阪桐蔭 西谷監督

高校時代は将来を考えて内野(遊撃)と投手の両方をさせた。高校では投手として十分通用すると思ったからだ。真っすぐが癖球で真っスラと言うのか、少し動く。それにスライダーが高校生としては良かった。  実は不器用な子。センスがある感じではないなと思っていた。岐阜の方々からは1年から使え、と言われたこともあったが、高校でもうまくいったのは3年生から。プロでも(成長に)時間はかかると思っていた。

川上憲伸

今までの野手が投げるだけのものとは違う、マウンドでの佇まいも違うし、フォームも軸もしっかりしている。

ピッチャーの経験がバッターに生きると思った。バッター根尾とピッチャー根尾というどちらの視点でもシミュレーションができる。

山崎武司

ピッチャーの球じゃない、速いだけ150キロだけでは抑えられない。良い変化球が必要

空振りの取れるストレートではない、バッターに向かっていく球ではない。

こんなことをさせている場合ではない。明らかに今年は違うなと思った。バッティンは光るものがある。もう少ししたら何か掴みそうなものがある。

山本昌

自分はイチローと並んでブルペンでピッチングをした時があったが、明らかに自分より球が速く15キロ近く球速差があるイチローから「昌さんの方が速く見えますね」と言われた。

野手の投げる球とは違いピッチャーの球は伸びている。今の球質と持っている変化球だけでは今の所難しい。バッター根尾として頑張ってほしい。

里崎智也

意外とフォームが良かった。ピッチャーとしてもありだと思う。どんな形でも結果的に大成すれば良い。ただのコンバートとそんな変わらない。いきなり木下やビシエドを投げたらそれはびっくりするが根尾のピッチャーとしての登板は想定の範疇。二刀流をするのであれば、どちらもチームの核にならなければならない。使いたいと思わせることが必要、ただ、どちらも「できます、やります」ではだめ。

吉見一起

緩急を身につける、投げる練習が必要、投手の体型になることが必要、少しボテっとしている、体脂肪をつけてスタミナをつけて、お尻周りが分厚くすることが必要。

ベース盤を強く速いピッチャーになってほしい。そのため、これからトレーニングだったり、投げて経験してコンディションごとに、変えて投げるスタミナも作ってベース板で速いピッチャーになっていってほしいかなと思うし、過去に野手からピッチャーで成功した人もいるからそういう選手になっていって欲しいと思います。やっぱりドラゴンズの宝ですからケガなく長く野球人生を投手として頑張ってほしい。

宮本慎也

外野との二刀流はアリかな、ショートは守備の良い人を入れないといけない、途中にショートから根尾がピッチャーに抜けたらどうするのか?ピッチャーとセンターラインのショートを気軽に入れ替えることはできない。百歩譲って、外野かファースト。ショートとピッチャーのスローイングも違う。

立浪和義 監督

投手の方が彼の能力が生きるんじゃないか。そこが一番。今、外野はなかなかライバルが多いし、守り的には素晴らしいものがあるけど。ショートは本人も課題が多いということで、だったら投手をやってみようかと。本人とも話して、本人も納得して『やってみたい』という話になった。皆さんが言われるようにいつまでもどっちつかずではいけない。

いきなり投げて150キロのスピードが出るというところと、まだ2試合しか投げてないが、ある程度、あの状況でストライクが入る。これからまだまだ投げられる球種も磨いていきながら将来的には先発を目指してほしい。ちょっとずつ来年に向けてやっていきたい。

また今後の起用法として、

勝っているところで、すぐには行けないと思うが、どんどん投げさせていこうと思う。

投手の練習は走ることとゴロ捕、あと、けん制とか多少なりともフィールディングとか。ショートのノックもずっと受けてますし、それも下半身強化とか投げることにもつながると思う。外野だったら多少長い距離を投げるとか。基本は投手のために野手の練習もしながら、打つ方は気分転換でさせていきたい。

まだまだ若いし元気。中継ぎで投げないという日は野手待機。何かあればもちろん使っていきたいなと思ってます。

 

以上の事をまとめると、まさに賛否両論で、意見が割れている状態ですが、共通して言える事は根尾選手が全てのことにおいて中途半端に終わるのではないか懸念していることです。

根尾昂のストレートと変化球

癖のあるストレート

根尾投手のストレートは、高校生平均やプロ平均と比べてシュート成分(横の変化)が極端に少ない特徴的な球質です
ピッチャーの投げるボールはほとんどシュートしていることが多いですが、根尾投手のストレートはほとんどシュートしないため、打者からするとまるでカットボールのように感じてしまいます。日本人メジャーリーガーではダルビッシュに近い球質だ。また伸びのあるストレートは綺麗な縦回転のボールより若干シュート回転しているボールであるというデータも証明されていますが根尾選手のボールは伸びのあるストレートとは逆の性質を持ち合わせているボールになります。

また、ボールの「ノビ」を表現するホップ成分(縦の変化)に関しても、高校生にしてすでにプロ平均並みの数値を記録しています。最高球速150キロ以上のボールも有しており、プロ投手と並んでも遜色ない能力を持っていると言っても良いと思います。

同世代の代表的な投手の吉田輝星選手と比べても、回転数は根尾投手の方が高いものの、ホップ成分は金足農・吉田投手の方が大きいです。その理由は回転軸にあり根尾投手のボールの方が「ジャイロ回転気味」であるため、ボールは揚力を受けず変化が小さくなります。

ボールの回転はTrue spin(バックスピン、トップスピン、サイドスピン)とGyro spin(ジャイロボール)の2種類に分けられます。

Gyro spin(ジャイロボール)は、回転軸が進行方向を向いている回転のボールです。通常の回転軸が進行方向に対して垂直になっているTrue spin(バックスピンやトップスピン、サイドスピン)とは空気抵抗など受ける影響が異なってきます。

Gyro spinとTrue spinの大きな違いは2つあります。
①マグヌス効果による力がほぼ働かない
②空気抵抗による減速が少ない

つまりTrue spinはマグヌス力が最大に働いている回転だと言い換えることも出来ます。そのため綺麗なバックスピンの回転の球は下からマグヌス効果が働き、ボールが揚力により、重力に引っ張られづらく、沈みにくいボールとなります。しかし、多少の空気抵抗を受けるため、減速しやすいボールであるとも言えます。

そして回転軸が進行方向を向いたGyro spin(ジャイロ回転)は、マグヌス効果がほぼ0になり、重力に引っ張られ、フォークのような軌道を描くイメージで落下します。またジャイロ回転をするボールは、フォーシーム回転やツーシーム回転の直球よりも空気抵抗が小さいことがわかっています。この現象の要因としては、ジャイロ回転のボールは空気を受け流しやすい回転であること、マグヌス効果による変化がないため運動エネルギーの減少が少ないことなどが考えられます。

この事から、ジャイロボールは落差がフォークやスプリットのような軌道を描きながらも、空気抵抗による減速が少ないため、バックスピンのストレートよりも早いタイミングでキャッチャーまで到達することになります。

ジャイロ回転軸が上に傾くと、変化方向のサイドスピン成分が入ってきます。その結果回転軸方向に変化が起こります。実際高速スライダーと呼ばれる球はこのような回転軸をしていることが多いです。伊藤智仁投手の横スライダーはこのような回転軸です。特にこのようなスライダー回転のボールは、ジャイロ回転に回転軸の傾きが生まれることによってSpin efficiencyの割合が増え、ボールを回転方向に変化させる力ようにマグヌス効果が働きます。

よってカット気味のジャイロ回転のボールは沈むような軌道を描き、横への変化を起こすため、打者からすると、伸びのない打ちづらいカット気味のストレートになり得る要素を持ち合わせています。根尾投手の大阪桐蔭時代のストレートは主にこのような要素を持ち合わせたストレートを投げているというデータが残っています。

解説者の方々は伸びのない野手のような球質だと評価をしている方も多いですが、根尾選手のストレートはこのような要素を持っているということを加味するとまた新しい見方が出来るかもしれません。

また、根尾選手は最近まで外野手の練習も集中していたことから、遠い距離を投げるため、大きく正確なフォームで強く投げる事は意識して実践されていたと思います。

野球というスポーツの中で様々な動作を経験することで、フォームの修正や新たな気づきに繋がることは多くあるため、野手の経験から高校時代とは違う強くて速いボールを投げ込めるようになった可能性は大きくあると思います。

決め球となる変化球がない

根尾選手の持ち球はツーシーム系、カットとスライダー系、ゆるいカーブ系、チェンジアップ系の落ちるボールとある程度の変化球を投げる事はできますが、決め球となる変化球を持ち合わせていません。実戦での登板ではお試し程度としか投げておらず、何がウィニングショットとなるかは定まっていない様子が窺えます。今後変化球の精度を磨き、決め球となる変化球を身につけ、実践で使っていくことが必要となります。

出典:https://sportiva.shueisha.co.jp/smart/clm/baseball/npb/2022/06/15/ob_3/

根尾選手の将来像、二刀流もありなのか

ショートの経験

内野守備は正確に素早く動作を行うことが強く求められます。そのため、スローイングも丁寧かつ正確な動作を基本として、なるべく小さい動作を身につける必要となります。この小さい動作が体に合わず、イップス状態になり、自分のフォームを見失う選手も数多く見られます。チームメイトの福留孝介選手や、元オリックスバファローズの田口壮選手は二遊間の守備位置から外野手に転向されています。

それだけ内野守備とはとても難しいものであり、一連の動作を身につけるまで時間の掛かるポジションです。根尾選手は高校時代から、ショートピッチャーのポジションを兼任で試合に出場していました。ショートというポジションは内野の中では、比較的強いボールを投げることが求められるため、アマチュアの中では、ショートとピッチャーを兼任していることはそれほど珍しくはありません。

元読売ジャイアンツの桑田真澄投手は、内野守備もとても得意でフィールディングがうまい選手でした。内野守備の動作はピッチャーの守備でもとても生かされることもありますが、ショートの守備のスローイングは小さく、速い動作の中にも、強く、速いボールを投げることも求められ、ピッチングフォームに良い影響を起こす要素は十分に含まれています。

もちろん、ショートのスローイングはピッチャーの投球フォームとは異なりますが、ショートの動作とスローイングをある程度こなせる根尾選手でしたら、自分のペースで正しいフォームで投げることができるピッチャーというポジションでは本領を発揮することも予想できます。

器用貧乏?ユーティリティ?その差とは 経験を生かす

根尾選手は今まで、ポジションも固まらず、中途半端な状態だと印象を受ける方も多いと思いますが、視点を変えると外野守備、内野守備、ピッチング動作、全てにおいて、プロレベルである程度正確にこなす能力があると考えることができるため、様々なポジションの

動作から体の使い方も覚え、実戦で生かすことができるのではないでしょうか。

そのため、今回のピッチャー転向が根尾選手の終着点ではなく、これからのプロ野球選手のキャリアの中で成長していくための通過点として捉えることができます。

日本では、一つの物事に集中して、極めていくことが正しい選択肢として捉えることが一般的だと思いますが、アメリカでは様々なスポーツを経験し、どの道でもある程度の能力を発揮し、最終的にその道のエキスパートになるという事は珍しくありません。メジャーリーグでも、野手と投手の同時進行という道筋は大谷翔平選手が初めてではないかと思いますが、野球界の中でも、ピッチャーを含めた様々なポジションを守り、その経験がスキルとキャリアアップに繋がるケースも生まれるかもしれません。これだけ根尾選手の起用方法で賛否分かれるということは、それだけ根尾選手がどのポジションでも期待が持てる、可能性があるという事を意味していると思いますので、器用貧乏とユーティリティは紙一重であると思いますが、様々な経験をして最終的には自身の能力と特性を生かした役割とタイプが見つけることが、辿り着く先のように思います。

”打者”根尾昂の評価

結局は打ててさえいれば

根尾選手の身体能力と肩の強さは誰もが知るところですが、外野守備もそつなくこなし、ショートの守備も練習の成果次第と及第点レベルで守ることができていました。しかしポジションを与えてレギュラーとして起用できない大きな理由が打力不足にありました。わざわざスタメンで起用するまでの打力が伴っていないと評価されていたため、野手として根尾選手に与えるポジションがなかったことが、今回の投手転向に踏み入った大きな要因になったことが推測されます。

根尾選手は元々、器用なタイプの選手ではなく、一つのことを身につけるのにそれなりの時間が掛かるタイプだというお話があります。そのため頑固であるだとか、人の意見を聞いていないと評価されることも多いのではないかと思います。

しかし、技術を身につけるスピードは人それぞれであり、すぐに、そつなくこなせる選手もいますが、それなり時間が掛かる選手も少なくありません。元中日ドラゴンズの山﨑武司選手は不器用な選手は技術が定着するまでは時間が掛かるが、「鈍くさい人が掴むととてつもない成績を出し始めるから、」とお話しをしています。

このことから、根尾選手は身体能力や独自の才能で様々なポジションはある程度こなすことができますが、プロレベルの中で活躍するまで技術を定着するまでにはある程度時間が掛かっているのではないかと思います。

要するに全てのことにあと一皮剥けてほしいというのが共通の認識になると思いますが、それまでの過程は様々であり、その過程に本人も首脳陣も試行錯誤している様子が窺えます。そのため、今回のコンバートについても、根尾選手の起用方法や将来像についても結果が出てみないと、何も言えないというのが答えになるのではないかと思います。

投手根尾としてはまだ、始まったばかりであり、野球選手としてもまだまだ、道のりは続いていきます。今後の才能溢れる根尾選手の動向に注目していきたいですね。

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