大谷翔平選手のバッティングを分析② ホームランを打つためのスイング軌道 アッパースイングとは? 前半
前回は大谷翔平選手のバッティング技術を打球速度と打球角度という視点から解説をさせてもらいましたが、今回はホームランを打つためのスイング軌道についてお話をしようと思います。
フライボール革命が広がり、アッパースイングがホームランを打つために必要だという認識が広まりつつありますが、実際に大谷翔平選手はどのような意識でバットスイングを行っているのでしょうか。様々な解説の方が大谷翔平選手のバッティング理論について触れる機会がありますが、また一つしっかりとした答えが出ていないのかなという印象を受けています。それだけ高度で先進的な技術を駆使していると思いますが、今回はいろんな解説の方のお話しや伝わってきている理論を交えながら考察をしていきたいと思います。
前回
大谷翔平選手のスイング軌道
まず始めに大谷翔平選手のバッティングを見るときにアッパースイングに着目してみる方が多いと思います。バットを下から出してすくい上げるようなスイングで大きいフライを打ちホームランを連発するイメージが強いと思いますが、このようなスイング軌道はバレルゾーンを意識した打ち方になります。
バレルゾーンは打球速度158km/hから出現して26°から30°の打球角度によりホームランが入りやすくなるという理論ですが、打球速度が早くなるに連れて打球角度に依存しなくなるという傾向があります。
バレルゾーンを作り上げるスイング
このバレルゾーンを自ら作り上げるため、芯でボールを捉え強い打球を放ちつつ、打球に角度をつける打ち方が今の大谷翔平選手のスタイルになります。
そのためボールをレベルスイングで捉えてしまうと打球に角度が付きづらくなり、ライナー性の打球が飛んでしまいますので、バットを下から出す事でボールの下を叩く事で自ずと打球はフライ傾向になります。また、ボールをしっかり捉える事で打球速度も上がり、必然とホームランが増えていきます。この意識を形作ったものが大谷翔平選手のスイング軌道になります。そして下からバットを振り上げる事で縦振りをフルに生かしてボールに体の力が十二分に伝わっているため特大飛距離のホームランを放つ事ができると思います。
従来のホームランアーチストの打ち方
従来のホームランを打つためのスイング軌道はレベルスイングで向かってくるボールのラインにバットを入れてボールの下を擦るように捉え、バックスピンをかけて打球角度をつけるという方法が主流でした。
ノックで分かるフライの上げ方の違い
外野ノックを打つ時も同じような技法でバックスピンをかけてフライを上げますが、内野フライを上げる時は逆にバットを下から出してボールを下から捉えて打球を上げます。大谷翔平選手のスイング軌道はどちらかというと後者のスイング軌道になります。実際にノックを打ってもらえれば分かると思いますが、ノックに慣れていない人は内野フライより外野フライを上げる方が楽だと分かると思います。それだけ大谷翔平選手の打ち方は高度な技術だという事が感じられると思います。
基本が分かったうえで自分にあった打ち方を見つける
しかし大谷翔平選手の打ち方は実践不可能という事はありませんし、従来のホームランの打ち方が時代遅れという事でもないと思います。バッターにはそれぞれタイプがあり、身体能力とパワー、身体のバランス等、さまざまな違いがありますので、どの打ち方が自分に合うのか、また試行錯誤してさらに変えるべき所はないのか自分で考え選択していく必要があります。また、どちらの打ち方にしても基本が出来ていないとバッティングフォームをいたずらに崩してしまう結果にもなりかねないので、まずは基本を押さえる事と身体を鍛える事を基盤として、そこから自分なりの物を身につけて頂けたらと思います。
出典:https://www.google.com/amp/s/nikkan-spa.jp/1765475/amp
大谷翔平のスイング軌道で慣れていない人がぶつかる壁
また大谷翔平選手の打ち方は打ち損じたり、感覚が狂うとバックスピンと真逆のドライブ回転が掛かる打ち方になってしまいます。ドライブ回転は打球が伸びづらく、地面に向かってボールが変化しまうように打球が落ちてしまう回転になります。決まった場所にボールを落とさないといけないテニスや卓球ではドライブ回転は必要な技術ですが、ホームランを打つという観点からでは障害となってしまう現象です。
2021年のオールスターでの大谷翔平選手のホームラン競争では、序盤力みのせいなのか中々スタンドに打球が届きませんでしたが、ああいった打球がドライブ回転になります。ソフトバンク柳田悠岐選手のライト前ヒットやセンター前ヒットなどは強いドライブ回転が掛かっており、打球が上がらない時はこの傾向に陥りやすいのが、大谷翔平選手や柳田悠岐選手のスイング軌道のデメリットではあると思います。
また、高めの球をバットを下から出して角度を付ける打ち方は最初はとても慣れなく空振りやドライブ回転をかけてしまう事が多くなってしまいます。それだけ難しくて新たな試みで大谷翔平選手は挑戦されていらっしゃるのかなと私は思います。
そして、下からバットを意識してしまいバットを遠回りしてしまったら手首を寝かしてヘッドが肩のラインより下げる事にも繋がり、そういったことは絶対に避けて貰えたらと思います。(ドアスイングとアッパースイング)
まずは自分のバッティングフォームを固めて扱えそうな部分だけを採用する事もまた方法だと思います。
バッティングの基本についてはこちらで解説させて頂いてます。