不思議な指標BABIPの読み取り方、選手の個性を知る、ゴロ、フライ、ライナーとの関連性

イチロー

不思議な指標BABIPの読み取り方、選手の個性を知る、ゴロ、フライ、ライナーとの関連性

BABIPとはホームランを除くインプレー中に飛んだ打球がヒットになる割合の数値を表しています。この数値は3割前後に収束されるとされ、短期間で高い数値を残すバッターは数値が上振れていると判断ができ、その期間は運が良かったと判断されます。

しかし、足の速い内野安打の多いバッターは比較的高い数値を残すとされ、必ず3割前後に数値が推移するとは限りません。反面、ピッチャーの被BABIPはほとんどの投手が3割前後に収束するとされ、インプレー中に飛んだ打球はピッチャーの能力でコントロールする事ができないと結論づけられています。この事から、打たせて取るタイプの存在を前面から否定する形となってしまい、ピッチャーはいかにホームランを打たせないで、四球を少なく、奪三振を多くするかという部分で能力を判断されてしまいます。

この事はバッターにも同じことが言え、三振が少なく、ホームランと四球が多いと良いバッターと判断されています。しかし、今までの野球史を見ても、ホームラン、四球、三振だけで完結しない、打たせて取るタイプの投手や中距離タイプ、アベレージタイプのバッターが数多く存在したことも事実です。また、2人の打者が同じ打率の場合、三振が多い方がグラウンド内で完結したインプレー中の打球が減り、BABIPの数値内の母数が減るため、BABIPの数値が高くなります。そのため、三振数が多いと打率は下がってしまいますが、BABIPはインフィールド内の安打率なので三振の数は影響を受けず数値が下がる事は起きません。

そのため、BABIPだけの数値だけでは、選手の能力を全て測ることは難しく、一概にBABIPを運要素だけで片付けられず、選手の能力を別視点から着目することは可能なのではないかと思います。

打球速度、角度とBABIP

前述したようにBABIPの数値はバッターの能力が介入する余地はあり、その要素として打球速度と打球角度があります。打球の種類はゴロ、フライ、ライナーに分けられ、打球素億度についてはsoft% mid% hard%と右から遅い、普通、速いと分けられています。

この事により、速いゴロ、遅いフライ、普通のライナーなどに計9種類に種類分けする事ができます。

単純に考えて速い打球がヒットになる確率は高くなり、2014年から2018年のNPBの打球別のアウト発生率を見てもゴロ0.786%、フライ0.689%、ライナー0.245%とライナー、フライ、ゴロの順番でヒットの確率が高くなります。また、フライについては長打の確率がとても高くなり、ホームランの可能性も生まれてきます。

この事から速い打球かつ、ライナー、フライを放つ事でBABIPの数値も高くなることが予測され、バッターの打球の質により、BABIPの数値は変化するという事が言えます。

また打球速度に関しては、初速が95マイル(152キロ)を越すハードヒットと呼ばれる打球は2021年のNPBでは打率.618と非常に高い数値を残しています。そして、ホームランや長打が出やすいとされるバレルゾーンの打球は2016年のMLBでは打率.822、長打率2.386になると言われています。

このように打球速度と角度がある程度の基準を満たすと打率、長打率が大幅に上昇し、伴ってBABIPの数値も高い水準で推移するということが言えます。

BABIPの高い数値を残すタイプとは

先ほどもお話しした通り、バレルゾーン、ハードヒットのように打球速度と角度がある程度の基準の数値を満たすと打率、長打率が格段と上昇し、それに伴いBABIPの数値も高い水準で収まるという事が予測されますが、BABIPはあくまでもグランド内に飛んだ打球の安打の割合であるためホームランの数や確率は数値の中に含まれません。よって、ホームランの出やすいバレルゾーンやフライと言った打球はBABIPの数値に関連しづらくなります。

また、フライのアウト発生率は0.689%となりますが、ライナーのアウト発生率は0.245%と比べるとライナー打球の方がアウトになる確率が非常に低くなります。

ソフトバンクホークス在籍のデータアナリストである齋藤周さんは打球速度を87マイル(=140km)に固定して、さまざまな打球角度での検証を行った結果、もっとも打率が高くなるのは打球角度14°という結果になり、打率は0.956と非常に高い数値を残すというデータが検証されました。もちろん、打球速度が150キロを超えるバッターはホームランを打つために30度近くの打球を放っても良いと思いますが、今回はあくまでもグランド内に飛んだ打球においてのヒットの確率に焦点を当てましたので、このようにライナーの打球を多く放つことで、打率もBABIPの数値は高くなるという事が言えると思います。

参考文献:https://note.com/amapen/n/na43cccae7ef3

イチローとBABIP

イチロー選手はメジャーデビューから10年連続200本安打を継続した2001年から2010年までの間、BABIPは.330を割ることはなく、メジャーシーズン安打記録を更新した2004年は.403と高い数値を残しました。

イチロー選手はバットコントロール巧みで高い打率を安定して残し、三振数が少なく安打数がとても多い打者です。その反面、ホームラン数と四球数はメジャーを代表するバッターの中では決して多くありません。そのため、インプレー中に打席が完了する機会が多くなります。その中で、安定したBABIPの数値を残したイチロー選手ですが、その要因として内野安打の多さとライナー打球の多さにあります。ライナー性の打球がヒットになる確率が高い事は先ほどお話しした通りですが、イチロー選手は他バッターに比べ、ゴロ打球の割合が非常に高く、通常の場合アウトになりやすいゴロ打球を足の速さと一塁まで近いという利点がある左打ちという要因により内野安打としてヒットを稼ぐことができました。このようなタイプはメジャーリーグでは前例がなく、ゴロ打球が多い=打撃成績が上がらないという概念を覆し、イチロー選手が自身の能力と技術、特性をフルに活用し、アベレージタイプとして一つのスタイルを確立されました。

まとめ

以上の事から、BABIPを運要素としてだけまとめる事は考えづらく、バッターによって数値は変化しその数値からバッターの特徴を測る事ができます。

BABIPの高い打者の特徴として、ライナー性の打球が多く、ゴロ打球も内野安打にできる走力のある事、また守備陣の間を抜きやすくなるよう、打球速度が速くして、ハードヒットの割合を増やす事が挙げられ、BABIPの向上と共に打率も向上し、結果確実性の高い打者になることができます。

また、四球数を増やし、確実にアウトになってしまう三振数を減らし、確実に得点を得てアウトにならないホームラン数を増やす事で必然と打撃成績は向上し、最強バッターと位置付く事ができ、選球眼の良くパワーとスピードを兼ね備えた5ツールのプレイヤーが野球というスポーツの中で重宝されます。

このようにBABIPの数値の中にも様々な要素が含まれ、BABIPが高い選手について、どのような特性や特徴があるのか、選手のタイプを分析することが出来るため、この指標から新しい野球の味方が見えて来るのではないしょうか。もちろん、BABIPの高いバッターの能力がある程度、解析、常態化した際にBABIPが極めて上振れている場合は運も絡んでいるという見方もできると思います。そのため、BABIPは他選手と比べるのではなく、その選手の他シーズンの数値と傾向と比べることが得策なように思います。

関連記事

藤浪晋太郎とショートアーム 復活のために必要な要素 藤川球児さんの教えから学ぶ事

投手 メジャーリーグで流行!? ショートアームに変える意味とは? 大谷翔平も実践

変化球講座① 亜細亜大ツーシームの投げ方(改良版) 横浜、山崎康晃 ヤクルト、清水昇

千葉ロッテ、佐々木朗希投手 完全試合達成 その要因と成長の明かし フォークが魔球に

大谷翔平選手のバッティングを分析① 打球速度と角度 フライボール革命とバレルゾーン(ホークアイ)

大谷翔平選手のバッティングを分析② 前半 スイング軌道 アッパースイングとは? 

大谷翔平選手のバッティングを分析③ 後半 スイング軌道 従来のホームランアーチストと比べて

バッティングの応用③ 右投げ左打ちの選手に有効!?大谷メジャー流 押し手と引き手の感覚 根鈴道場

バッティングの基本④ 落合博満選手のバッティング理論 バッティングの原点

 
タイトルとURLをコピーしました