バッティングの応用② 自分の利き手を知る 右投げ左打ちは意外と不利!? 大事な押し手の感覚
野球選手には右投げ右打ち、左投げ左打ち、右投左打ち、はたまた両打ちの人など様々なタイプの選手がいらっしゃいます。
そんな中、意外と利き手が右手なのに右投げ左打ちの選手も珍しくありません。また右投げ、左投げ関係なく、両打ちに挑戦される方もいらっしゃいますので、必ず利き手の方でバッティングをされるとは限らない方が多いと思います。比較的投げる方は利き手の通りという傾向にありますが、スイングする時に意外とリードする手がどちらなのか分からない人も多いのではないでしょうか?
今回は、バッティングに置いて普段はあまり意識をしないの利き手とリードをする手についてお話しをしようと思います。
今までの教え
従来の教えでお話しをしますとバットスイングをする時にリードする手はバッターボックスに立った時の前の手(引き手)であり、引き手でバッティングの壁を作ると教わった方も多いのではないかなと思います。
私自身もそのような教えの元、私は右打ちのため、いかに左手でバットを引っ張っていけるかを意識して、左手一本で素振りをしていました。しかし私の利き手は右手のため、左手だけでバットを振ると何となく違和感があり、片手のティーバッティングはとても苦手でした。
しかし、最近になってバッティングの基本は利き手であるという理論と後ろの手(押し手)の方が大事だという事を知り、右手を意識して振るようにしましたら、バットコントロールがとても楽に出来るようになりました。最近ではトスバッティング(ペッパー)は練習中は右手一本で簡単にできるようになり、ヘッドを立てる感覚もバットをリードする感覚も右手頼みであり、左手はただ添えているだけの感覚でバットスイングをしています。
押し手が利き手である大事な理由
利き手が押し手である大事な理由としてまず一つ目に、押し手が自分の利き腕である事でバットコントロールがしやすい事と、力も使いやすく強い打球を打ちやすいという点です。テニスや卓球を考えてみると分かりやすいですが、スマッシュのような強い球を打つ時はみんな利き手でラケットを握り、押し手としてラケットを使い、フォアハンドでラケットをスイングをして強い球を打っていると思います。野球も同じ理由で押し手でリードをした方がバットコントロールも簡単で、さらに強い打球を打つ事が出来ます。そのため、利き手を押し手として使い、バットをコントロールしてボールを強く捉えるという事は必要な技術になるのです。
もう一つの理由として、バッティングフォームとピッチングフォームは連動しているという事です。後ほどお話出来たらと思いますが、バッティングフォームとピッチングフォームの体の使い方は、ほとんど同じのため、自分の投げる方と逆の方でバッティングをするとそういった連動性が感覚として掴みづらくなります。利き手の方でバッターボックスに立った方が連動性が高く、バッティング動作のコツも掴みやすくなります。そのため、右投げは右打ち、左投げは左打ちで打つ方がバッティングスタイルとして自然な形になるのです。その反面引き手でバッティングをする人はピッチングをするような体の使い方が感覚として備わっていないため、初めは違和感を持ってバットスイングをする人は少なくないと思います。
引き手が利き手であるメリット
先程は押し手が利き手であるメリットについてお話しをしましたが、今度は引き手が利き手であるメリットについてお話しをしたいと思います。
まず、引き手の役割として、バットをミートポイントまで誘導する、コントロール機能を果たします。そのため引き手が利き手である場合はバットコントロールに長ける一面があり、右投げ左打ちにアベレージヒッターが多いのは、そういった要因があるからなのではと思います。また、引き手でバットのヘッドを返す感覚を持つ選手は押し手の力に頼らず、押し手は補助的な機能として使われる選手も少なくはないのかなと思います。また、引き手を主体的に使う選手はバットをこねるクセが表れづらく、スムーズにバットスイングができるという利点があります。
最近のプロ野球選手で多い右投げ左打ち
最近のプロ野球選手には右投げ左打ちの選手が多く、初期には阪神タイガースの掛布雅之選手やヤクルトスワローズの若松勉選手などの右投げ左打ちの選手から始まり、現代野球においては松井秀喜選手やイチロー選手、柳田悠岐選手、福留孝介選手、青木宣親選手、大谷翔平選手など、上げればキリがない程、右投げ左打ちの選手が多いです。
ホームランバッターは右バッター、アベレージヒッター、俊足バッターは左打ち
しかし、2リーグ分裂後の1950年から数々のホームラン王が出ている中で右投げ左打ちの日本人バッターは、掛布選手、小笠原選手、松井選手、筒香選手、村上選手のわずか5人しかいません。その点首位打者の数は比較的数が多く、最近の中距離打者やアベレージヒッターは特に右投げ左打ちに偏る傾向があります。
右投げ左打ちが多い理由
なぜ、そのような現象が起きているかというと、左打ちは一塁ベースに少しでも近いため内野安打を狙い俊足の選手は左打ちに転向するケースが多い事が一つあげられると思います。学生時代にレギュラーを取るため少しでも有利な方に立とうと指導があったり、幼少期に父親、指導者に勧められたという人も多いのではないかと思います。そのため、ここ数年では左打ちに良い選手が偏り、アベレージヒッターや俊足バッターは左打ちに転向し、ホームランバッターや足を使わない打者は右打ちとして打ち続けるというケースが増え続ける傾向にあります。またプロ野球界に左打ちに好打者が増える事で左打ちに憧れて転向した子供たちも多いのではないでしょうか。そういった傾向と共に、利き手を押し手として使わないバッティングが主流となり、バッティングに一押しがなく力がうまく伝わらないため、左打ちのホームランバッターは生まれにくいという事が言えるのではないかと思います。
ちなみにホームラン王を獲得した松井秀喜選手は元々右打ちでしたが、あまりにもホームランを打ち過ぎるため、一緒に野球で遊んでいた兄が面白くなく、松井選手にハンデを与えるため松井選手がファンである掛布選手を真似して左で打つように促しだというエピソードがあります。また同じく筒香選手も横浜高校時代は両打ちであり、右打席の方がパンチ力があったと当時監督の渡辺元智さんもお話されています。プロ野球の世界でも両打ちをされている選手は揃って俊足の選手であり、俊足を生かすためにプロ野球に入ってから右打ちから両打ちにする選手がほとんどです。
右投げ左打ちによく現れるクセと改善策
先程のお話しでは利き手の方でバッターボックスに立つメリットをお話しましたが、今度は右投げ左打ちの選手の押し手と引き手の感覚についてお話をしたいと思います。
右利きの左バッターは利き手でない左手を押し手とするため、押し手でバットを振るという感覚があまり感じられません。そのため、引き手をメインとしてバットを振るため、バットの面が前に出過ぎたり、体が開いてしまう原因になってしまう時があります。そういったクセを改善するため、押し手の感覚を養う事が必要になります。
練習方法
練習方法としては自分が上げたトスを押し手(左手)でバットを振るように左手でボールを捕る練習やティーバッティングをするみたいに上げて貰ったトスをスイングをする様に左手でキャッチするという練習を実践して頂けたらと思います。左手を意識して使う事で少しでも利き手と同じ感覚でボールを捉えるという感覚を養う事が重要になると思います。そのため、左手一本で素振りやティーバッティングをする事も良い事だと思いますので、自分に合った左手の感覚を養う練習をして頂けたらと思います。
利き手、逆手の感覚の捉え方はミノルマンさんの練習方法を参考にして貰えたらと思います。
右投げ左打ちがバットを強く振るには
ここまでのお話しでは右利きの左打ちは不利になるというように聞こえると思いますが、一概にそういった事ではないと私は思います。実際に引き手を意識してバットを強く振る方法も存在します。これからは引き手を意識したバットの強い振り方をお伝えしたいと思います。また、今日のお話は右投げ左打ち、左投げ左打ち、右投げ右打ち、はたまた両打ちどれが優れているかという事ではありません。私がお伝えしたい事は、右打ち、左打ちそれぞれに感覚の違いがあり、その事を理解して自分はどのようなバッティングフォームが合っているか、どのような感覚が自分にピッタリハマるかを考え選ぶ必要があるという事です。そのため、感覚や技術の引き出しは多い方が選択の幅が広がるので今回のお話しも一つの参考にしてもらえたらと思います。
右投げ左打ちの選手に合うバッティングスタイルとスイングの感覚
先程もお伝えしましたが、引き手でバットを強く振ろうとやりすぎると体が開いたり、ミートポイントが前に出てしまう傾向があります。しかし、そういった傾向を無くす一つの感覚があります。それは縦振りです。縦振りは体やバットを縦に回転する事を意識するため、しっかりと縦振りを実践できると体が開くという現象は起こりづらくなります。これは私の印象ですが、大谷翔平選手や柳田悠岐選手、吉田正尚選手などといった右投げ左打ちの長距離を打てる選手に縦振りとアッパースイングに見えるような体を逸らすスイングをされる選手が多いと思います。また引き手を意識する事でバットがスムーズに出やすくなるため、テニスでお話しをするとバックハンドがスムーズに打てるのと同じ感覚で打てます。
テニスのバックハンドのような感覚
先程からテニスのお話に例えさせて頂きましたが、左投げ左打ちの選手は自分のピッチングフォームと連動してバッティングフォームを形成すると良いですが、その感覚が右投げの左打ちの選手はテニスのバックハンドの打ち方を参考にすれば良いと思います。
次回はキーワードで出させてもらった大谷翔平選手や柳田悠岐選手のような縦振りとテニスのバックハンドについて関連付けながら引き手もうまく利用したバットスイングをお知らせしたいと思います。
注意事項
最後に断っておきますが、バッティングの基本はやはり押し手の力だと私は思っています。
次回は番外編として引き手についてピックアップしたいと思いますが、あくまでも基本は押し手だという事は忘れないで引き手の上手い活用方法として選択肢の一つにして頂けたらと思います。
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