【分析】千賀滉大 メジャーに通用する「お化けフォーク」ルーツと投げ方

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【分析】千賀滉大 メジャーに通用する「お化けフォーク」日本人特有の落差の大きいフォークのルーツと投げ方

 2023年にメジャーリーグに移籍した千賀滉大投手は、デビュー戦で持ち前のお化けフォークで三振の山を築き、今後メジャーでの活躍が期待されます。今回は日本人投手特有の大きく落ちるフォークの歴史をたどり、千賀投手のお化けフォークを分析したいと思います。

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千賀投手のお化けフォークと日本の大きいフォーク

 千賀投手のメジャーデビュー戦は、投球の88球中26球フォークを使い、8つの空振り三振は、すべてフォークが決め球だった。平均球速は84・6マイル(約136キロ)。直球の96・8マイル(約156キロ)と球速差が20キロあった。全26球の内訳はボール12、空振り9、ファウル3、中直1、安打1。わずか19%(5球)しかバットに当たらなかった。1分間あたりの回転数は平均1060で、直球(2324)の半分以下であり、このため落差は最大104センチ、平均86センチと大きい。右打者でバットに当てたのは、グリエル(元DeNA)が1球ファウルにしたのみという結果でした。

 このように千賀投手のお化けフォークは回転数が少なく、非常に落差が大きい変化球だが、このようなフォークは日本人投手の特有の変化球だと言えます。メジャーリーグのスプリット系のボールは変化量の少ないボールが主流となっているため、千賀投手のような落差の大きいフォークは非常に有効なボールとなりました。

 第5回WBC決勝、対アメリカ戦を見ても、今永投手、戸郷投手、高橋宏人投手、大勢投手が落差のあるフォークでメジャーリーガーから空振りを奪う場面が多く、バッターが対応できない様子が伺えました。

それでは、メジャーのスプリットと日本のフォークはどのような違いがあるのでしょうか。

日本のフォークボールのルーツと始まり

 日本でのフォークボールの源流は、元中日ほかの杉下茂、フォークボールの神様でありますが、明大時代、技術顧問のであり、のち中日監督となる天知俊一さん(に「人さし指と中指で挟んで投げてみろ」とだけ言われて投げ始めたのがきっかけでした。実戦では1949年の中日入り後、本格的に使い始めましたが、当時、ナックルを投げるピッチャーはいる中、フォークの使い手はほとんどおらず、言葉自体も一般的ではなかった。杉下自身が何も言わなかったので、「おかしな変化をする球を投げているな」と思われていたといいます。

 杉下投手のボールがフォークとバレたのは、51年のシーズン前、杉下が巨人・川上哲治らとアメリカのサンフランシスコ・シールズのキャンプに参加した時、打撃練習に登板した杉下投手がアメリカの選手に大きな当たりをされたことで、ムカッとしてフォークを投げたら誰も当てることができす、

「それでシールズのオドール監督から『それはフォークじゃないか』と言われ、『そうですね』と答えたのですが、これを新聞記者が聞いていて記事にしたため、日本でも『杉下投手がフォークを投げているという事が周知されました。

 当時のアメリカの選手も杉下投手のフォークボールには対応できず、そのまま、メジャー契約の話も持ち上がるくらい、有効なボールとして世間に披露する形となりましたが、当時から杉下投手はフォークボールの落差、球速を変化させ、変化方向もスライダー、シュート方向と投げ分けていました。その後、数々のピッチャーが杉下投手に教えを乞い、また、技術を盗む事で日本球界にフォークボールが浸透する結果となりました。

杉下茂投手のフォークボールの変化軌道

 杉下投手は、現代のフォークについてこのように述べています。「今の投手のフォークは『本物のフォーク』じゃない。蝶 みたいに不規則に揺れ、回転せずにストンと落ちるのが本物なんだよ」

 この言葉を読み取ると、フォークボールは原来、回転数が少なく、空気抵抗によりナックルボールのように揺れて落ちるボールだったという事が分かります。

 しかし、杉下投手の対戦した青バットことの大下弘さんは『あんな伸びてくるフォークを打てるはずがない』と話しており、バッターは落ちる前には伸びるような感覚も受けていたという事が分かります。

 また杉下投手自身、巨人軍の長嶋茂雄選手との対戦について「彼と勝負した時期は、自分の中ではもうだめだった。思うようなフォークにならなかった。スピードがなかった。ボールが速い時にあれを放ると摩訶不思議な変化をするが、ボールが遅くなってからだと、ただ山なりにふわっと落ちるような感じになる。それを打たれることがあった」と話しており、この事からも、フォークはある程度のスピードが求められる事が分かります。

杉下投手は「フォークを『落とすもの』だと思ったら大間違い。フォークは伸びるものだから。真っすぐを放るつもりで投げないといけない。」「やっぱり、いいフォークを投げようと思ったら、いいストレートを持つことに尽きる。140キロでもいいから、伸びのあるストレートを放る。その上でフォークを放れば効果的ですよ」と話しており、杉下投手が現役である70年前から、現代も主流となっているストレートとフォークのコンビネーションの投球スタイルが確立していました。
https://www.yomiuri.co.jp/sports/npb/20221206-OYT1T50104/6/

 以上が日本におけるフォークボールのルーツですが、現代野球ではフォークボールをどのような特徴があるのでしょうか。

現代の日本のフォークボール

 従来、フォークボールは回転数が少ない事で、重力により落ちるボールとして考えられてきました。しかし、日本人のフォークボールの回転数は大体1000pmh~1400pmhに収まります。この数字はMLB平均とさほど変わる数字ではありません。

 それでは、日本の落差の大きいフォークボールはどのような要素を含んでいるのでしょうか。その鍵となるのが、ツーシームの握りとジャイロ回転による変化になります。

 近年ではシーム・シフト・ウェイクといったボールの縫い目による変化について注目されていますが、フォーシームの握りとツーシームの握りでストレートを投げた時に明らかにボールのホップ成分が変わり、球速151キロ、1100回転でツーシームはフォーシームと比べて、ホームベース上でおよそ19センチ、落ちているという研究結果も出ています。

 フォーシームは1回転するうちに、縫い目が4回、上にくるため、ボールには後方に下向きの流れを作る力が継続的に働きます。その結果、ボールにはマヌグス力、つまり揚力が常に発生し、ボールに伸びが生まれます。

 一方、ツーシームの空気の流れは、ボールが1回転するうちに縫い目が2回、上に現れる事で、上側ではフォーシームと同じように空気が剥がれにくくなり、しばらくボールの後方に下向きの流れが発生している反面、2本の縫い目が下面を過ぎ、ボール上側と下側がともに縫い目がないツルツルの部分になったとき、ボールの後方の空気の流れが上向きに変わります。

 このようにフォーシームのボールは常に、縫い目が均等に空気に触れ、正のマグヌス効果が生まれ、下からボールが浮き上がるよう力が働くが、ツーシームの場合はボールが回転する中で、縫い目が当たる時間と当たらない時間が生まれるため、「負のマグヌス効果」が働くことが分かっています。この、「負のマグヌス効果」がボールを落とすための重要な要素となり、大きな変化を生む大きな要因となります。

SB千賀滉大投手「お化けフォーク」につながる愛知関係者の系譜…フォークボール伝来100年 : 読売新聞

引用:https://www.yomiuri.co.jp/sports/npb/20221207-OYT1T50045/2/

 また、正のマグヌス効果は、綺麗なバックスピンを掛ける事で大きな力を得ますが、ボールをジャイロ回転させる事で、マグヌス効果を生み出させず、空気抵抗と重力によりボールを沈ませる事ができます。ジャイロ回転は回転軸が進行方向を向いているため、ボールの回転の力がボールの変化に影響を及ぼす事がなくなります。そのため、ボールの回転からマグヌス効果を得ることができず、ホップ成分がない、沈む軌道を描きます。

 このように、ツーシームによる、負のマグヌス力とジャイロ回転によって、単純な回転の少ないボールよりもさらに落差の大きいフォークボールを投げる事ができます。

千賀投手のフォークボールの投げ方と握り

 千賀投手はフォークボールを投げる際にツーシームで人差し指だけを縫い目に掛けています。千賀投手いわく、人差し指を掛ける事で壁が生まれ投げやすくなるとのことでしたが、この事でボールに指が掛かり、ジャイロ回転やサイドスピンが掛かることで、バックスピンのようなホップ成分が得られない利点があり、落差の大きいフォークが生まれていると考えられます。

まとめ

 以上の事をまとめると、日本のフォークボールはなるべく回転数を抑えた、重力と空気抵抗を利用したボールがルーツであり、その中でもある程度のスピードを維持する必要がある中、ツーシームとジャイロ回転により、負のマグヌス力を得てさらにボールを落とすボールだという事が言えます。

 実際にフォークボールを投げる時には、この理屈を理解したうえで、どうすればボールに回転が掛かりづらく、ジャイロ回転が掛けられるのか感覚と投げ方を身に付けるため、過去のフォークボーラーの握りと投げ方、リリース、技術を参考にする事が大切だと思います。ぜひオリジナルな感覚と技術を見つけてほしいと思います。

 

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