根尾昂 野手から投手へ転向の成功パターンと選手タイプ 足の速さと肩の強さ
中日ドラゴンズ、根尾昂選手が2022年シーズン中に投手転向すると発表があり賛否両論となりました。
野手から投手への転向は日本プロ野球では限りなく少ない事例となり、最近ではオリックスブルーウェーブの萩原選手と嘉勢投手の2名を思い出しますが、実際に野手から投手の転向の成功例は存在するのでしょうか。また、成功する選手はどのような過程を通りどのようなタイプの選手なのか考察したいと思います。
メジャーリーグで多い成功例
日本プロ野球の投手転向
日本プロ野球では残念ながら野手から投手に転向しいわゆるレジェンドと言われるような一流選手になった選手は存在しません。しかし、萩原投手や嘉勢投手のように、1軍の中継ぎ投手として複数年レギュラーシーズンを通して活躍する投手は存在しています。この両投手に共通して言える事はやはり地肩が強かった事、嘉勢投手は左投げで若干スピードは落ちますが、萩原投手は特にスピードボールで勝負できる投手でした。
このように変化球、コントロールといった技術面での評価より、身体能力の高さや球の力の強さを評価されて投手転向に至るという過程が多くみられますが、根尾選手も同じく、150キロを超えるスピードボールを投げ、野手でもその力強い送球と強肩を生かしたプレーが魅力的な選手でした。また今季野手から投手に転向した日本ハムファイターズの姫野投手も150キロ後半のストレートを投げ込み、力で押し込む投球スタイルを確立しようと健闘しています。このように身体能力の部分、地肩の強さ、球の強さは天性の部分が大きく占めるため、投手になれる才能を持ち合わせているという事が言えるでしょう。
メジャーリーグでは
メジャーリーグでは野手から投手に転向した投手でいわゆるレジェンドと言われる程に活躍した選手は少なくありません。また決まって第一線で活躍を続ける選手のほとんどが抑え投手であり、有名な選手として、ホフマンとネイサンが挙げられます。特にホフマンに関しては600セーブを超えており、殿堂入りしている名投手です。またメジャーリーグの通算セーブ数の上位には野手から転向した投手が多く見られます。
メジャーリーグでは通算セーブ数がトップの選手の中にプロに野手として入団した選手は少なくありません。またナックルボーラーとして長年先発として活躍し、通算200勝をあげたボストンレッドソックスのウェークフィールド投手のような事例も存在しますが、この投手も含めて、メジャーリーグの野手出身の投手のほとんどはショートとキャッチャーとしてメジャー球団に入団しています。
左投げの選手は性質上守られるポジションが限られますが、根尾投手と同じく右投げの選手はほとんどがショートやキャッチャーといった、センターラインのポジションで肩の強さやフットワークといった身体能力が求められるポジション出身の選手が多く、その地肩と送球の強さを買われて投手転向に至る例は少なくありません。
投手転向後の課題と育成プラン
身体能力、強肩を生かし、スピードボールを武器に投手転向する選手が多い中、実際に転校後はどのようなタイプの投手となるのでしょうか。プロの世界ではストレート一本槍だけでは打者を抑えるという事は難しく、何かしらもう1つ武器となるものが必要となります。そのためウィニングショットとなる変化球を身につける事が活躍の必須条件となります。特に抑え投手として活躍する選手は短いイニングやピンチでの場面での登板が多く、役割上、失点を簡単に与えることは許されません。そのため、打者を確実に抑えるためのウィニングショットとなるボールが必要になりますが、この球種に至ってはまさに人それぞれであり、落ちる球からカットやシュートのようなスライド系の球、シンカー方向の沈む球など、自分が得意とする変化球に磨きを掛ける場合がとても多いです。
根尾投手の場合は今のところ縦スライダーが大きな武器となり、打者も対応できず、空振りをするシーンが目立っています。しかし、根尾選手は将来先発を目指すという方針が示しだされているため、このような武器の他に、スタミナやコントロール、牽制、フィールディングなどの技術的な部分と安定性と総合力が求められます。この部分が今までの野手から投手転向にあたっての大きく異なる点になるのではないでしょうか。
また球種を増やす事は、必須条件として求められる課題になると思います。現地点では根尾選手はツーシームを投げる場面も度々見られますので、このような小さい変化と一緒に何かしら緩急がつくボールを身につけるという事が予想されるでしょう。
過去に事例を踏まえたうえでの成功への考え方
先発として長く活躍するにあたり、一番大切となるものは体の強さが挙げられます。この体の強さとは怪我をしない事や、肩肘の強さも含まれますが、特に下半身の強さと体全体を大きくするという意味で野手の時よりある程度体重を増やす事が必要となります。
メジャーやプロ野球を見ても細身の選手で先発投手として長年活躍する選手は少なく、若手の先発ピッチャーを見ても、年々体が大きくなる傾向が多く見られます。この体を大きくするという意味としては、下半身の安定とスタミナをつけるという事は強く関連しており、=球の力強さにも繋がり、安定した球威を継続して発揮する事が可能となります。
しかし、体重を増やすことにあたり、よく間違いとして起きる事として、単純に筋肉量を増やす事が挙げられます。ピッチャーの能力に強く関連している筋力として、瞬発力とそれを支える土台となる基礎体力が求められ、瞬発力はそのまま、球の強さと球速に連動し、この瞬発力を維持したまま、体を大きくして体重を増やす事が=基礎体力の強化となります。ピッチングは全身運動であり、特に下半身の体重移動と蹴りの強さなどが、そのまま球の強さに繋がりますので下半身と体幹を中心とした筋力強化が求められます。
また、投手の体重と球速の関連性として、140キロ代の速球は体重60キロ代でも投げられる投手は多く見られますが、球速150キロを超えますと体重と球速の関連性は強く露出され、体重70キロ以下で球速150キロを超す投手はほとんど見られません。また球速150キロ後半の球速を安定して出す投手は体重を80キロ以上をボーダーの目安に90キロから100キロ近くまで体重がある投手がほとんどです。
体重×スピード=力、この法則は球速や球の力強さにそのまま関連します。根尾選手は元々ショートや外野手といった肩の強さの他にスピードも求められるポジションを守っていたため、瞬発力は天性のものと、鍛えられたもので既に強い力が身についていると思います。そのため、現時点でも150キロを超すストレートを安定して投げ続ける事ができますので、これからは瞬発力を維持したまま、筋力強化で体重を増やし、球速を上げる事と共に長いイニングを安定し、持続して球速を出していくという事が側近の課題、目標になるのではないでしょうか。
またこの理論は球速と共にバッティングの飛距離、スイングスピードにもそのまま、直結するため投手のトレーニングはバッティングにも良い影響を与える事も考えられます。プロに入って根尾選手の課題であったバッティングの非力さもこのような要素で解決する事も予想されるため、現地点では投手一本の方針という事ですが、違う側面で効果が得られる可能性は十分にあると思います。特にアマチュア時代、少年野球、学生野球の時期には、投手と野手のトレーニングを並行して行うという事は選手の可能性の幅を広げるという事、野球に必要な筋力を満遍なく鍛える事ができるという事、そして何より野球の本質である打つ、投げる、走るという要素を偏る事なく楽しめるという事を伝えたく、根尾選手の投手転向に伴い、情報発信をさせて頂きました。野球選手である以上、できるだけ走攻守全てのプレーに関わるという事がプロの試合でもたくさん見られたらと思います。
以上の事をまとめると、根尾選手のように野手から投手に転向する場合の成功要素として、
②安定した出力を目指すため、下半身を中心に筋力を増やし、瞬発力を維持したまま体重を増やす。
③ウィニングショットとなる変化球を持つ事と先発をする場合はカウントを稼ぐ動く球と緩急が必要になる。
以上の事が過去の事例を基に投手転向の成功への過程になるという事が考えられます。
また余談として、投手のトレーニングはバッティングの飛距離にも良い影響を及ぼすため、アマチュア時代は投げる事を含めた投手トレーニング等を複合して行うことが大切になるという事が言えるでしょう。このように根尾選手の出来事を踏まえ、新たな選手のスタイル、育成、練習方法が見出される事を期待して今後の動向に注目していくと新たな楽しみと発見があるのではないでしょうか。
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