メジャー挑戦 藤浪投手の不振、打開策は若いうちの投げ込み、走り込みだった  

メジャー挑戦 藤浪投手の不振、打開策は若いうちの投げ込み、走り込みだった

 2023年、藤浪投手は阪神タイガースで期待されながら伸び悩んでいたため、活路を見い出すべく球団側にメジャー挑戦を直訴した後、容認され、今季からポスティングシステムでアスレチックスへ移籍しました。

 しかし、藤浪投手は開幕から4試合に先発登板して4連敗を喫し、防御率は14.40。メジャーデビューから15イニングを投げて24失点と不安定なピッチングが続き、この事で藤浪晋太郎投手を先発ローテーションから外しピッチングが安定する前中継ぎに配置転換する事となりました。  
 
 これまでの藤浪投手のピッチングを見ると、日本時代からイップスを疑われた制球難は相変わらず払拭できておらず、投球に困ったら、いわゆる“変化球でボールを置きにいってしまう状態も日本時代と変わらない藤浪投手と何も変わらない現状でいます。藤浪投手の不振について、メンタル面、技術不足など様々な要因が予想され意見が飛び交っていますが、今回は練習という観点から藤浪投手に足りないものについて、ある投手のエピソードと共に考察したいと思います。

落合氏と金本氏の談話 走る事と投げる事の再現性

 過去に落合博満氏はテレビ番組で当時阪神タイガースに在籍していた藤浪投手の現状を問われた「みんな、メンタル(の問題)だって言うでしょ? 俺に言わせりゃ『お前、技術がないんだろ』ってだけ。技術がある奴はメンタルには来ない。だったら、精神的なことを鍛えるんじゃなくて、野球の技術を会得しないといけない」と藤浪投手の技術不足についてコメントされていましたが、

 加えて落合氏は「昔のピッチャーは、たとえばアウトローに何球投げますよと言ったら、そこに投げられなかったら終わらない。ほかは投げない。順序立てて全部やって、それで開幕を迎えるわけ。今のピッチャーというのは、『(練習で)今日は100球投げます』と言ったら、球がどこに行こうが100球で終わるんだわ。だから技術の向上がないの。そのなかで身になる練習というのは、10%あるかないかじゃない?」と練習の量や取り組み方にもコメントされています。

 また、過去に不振に悩む藤浪選手の育成について、落合氏は当時阪神タイガース監督の金本知憲氏に「藤浪の不振はランニング不足。下半身が弱いと思う。コントロールのいい投手は、やっぱり走る。だから昔の投手がね、たとえば今50歳や60歳になった人にね、キャンプの時に人がいないから、ちょっと投げてくれよと言って投げてもらうでしょう?乱れないもんね、1時間半投げても。ボールを投げることが終わってから10年、20年たっていても下半身が乱れることがない。それは体が覚えているんだろう。」

「自分に今、生きていくために必要なものを彼は早いうちからやらないと、このまま終わる気がする。死ぬまで…じゃないけど、それくらいの覚悟をして、やらないと。もうちょっと下半身をいじめないといけないんじゃないの?」と提言しました。

このことに金本氏は藤浪投手のフォームの崩れが原因と返しましたが、

加えて落合氏は「だから投げ方を完全に忘れさせるほど走らせないとダメだと思う。下半身を作らないと。投げる体力がないと思う。だから、どこかしら逃げている部分があるのではないかということを、たとえば俺が監督をやっている時、キャンプで陸上競技場に行ったら、みんな嫌な顔をする。」

と今の選手がランメンニューを遠ざけてしまう傾向についてコメントし、

さらにランメニューを量をこなすため手を抜いて、ペース配分してしまう選手の意識についても注意を促しましたが、そのことについて金本氏は

「鈍足の太った投手と藤浪が同じタイムなんです。おかしいだろうと。藤浪は足が速いんですよ。でもタイムが同じなんで、藤浪は200メートルを涼しい顔をして走っているんです。片や太っている方は死にそうな顔をしているんです。」と藤浪投手のランメニューに対する意識の低さを表すエピソードを公開していました。

 そのことについて落合氏は「藤浪も、あの若さで今からやっておかないと。アメリカの投手も走るからね。メジャーの選手は練習をしないというふうにずっと言われてきていたけど、向こうの選手は朝4時、5時くらいから、人が来る前から走っているからね。人の見えないところで練習して。もしかしたらランニング量は向こうの選手の方が日本人より多いかもしれないよ。」と話し、金本氏は「ウチで一番、走るのはメッセンジャーですね」と答え、落合氏と走り込みの大切さとその質について確認をしました。

 また藤浪選手のトレーニングについて指導した金本氏は 「スクワットの姿勢がとれないんだよな。なんでかしらんけど。違うことで補っていかないといけないから。下半身はどうしてもつきにくいわ」と話していました。

能見篤史とメッセンジャーの忠告 シーズンに耐えるためには

 また、過去にプロ野球選手として2年目のシーズンを迎える藤浪投手について、当時チームメイトであった能見篤史投手は

「表現としては良くないかもしれないけど、僕は去年より悪くなっていると思います。」とコメントを残していました。その理由として続いて能見氏は 「プロとして1年間やったという余裕があると思うんです。でも、それは悪く言うと、なめるわけではないですけど「プロに慣れてしまった20歳」というふうになってしまう可能性もある。余裕を持つのはいいことですけど、未知の能力をまだまだ持っているでしょうし、実力のある選手ですからね。」

「去年、1年目で先発ローテーションをしっかり守ったことは立派です。ただ、規定投球回数には届いていない。年間170イニングから180イニングを継続して投げるしんどさ、続ける大切さを知っていってほしいです。これは、それぞれの投手によるところもあるんですけど、藤浪のキャンプ中の投球数も多くはなかったと思います。」

 続いて能見氏は「30代の僕と同じランニング量だったとしたらおかしいですよね。もっと走れ! 知らん間に手を抜くことを覚えてますからね。そういえば、メッセンジャーにも「お前はそのままでは普通の投手になってしまうぞ」って言われてました。これは本人がどう感じて練習に取り組んでいくかにかかっています。」と当時の阪神タイガースの左右の両エースから未来を予測するようなコメントを残されていました。

野村克也の提言 メッセンジャーを見習え

 また過去に野村克也氏は「技術の改善」は本人がどう修正していくかが大事だと話し、加えて藤浪選手自身が技術以前に改善しなくてはならない点として「お手本となるピッチャーの教えにもっと耳を傾けなさい」とコメントされ「阪神にはランディ・メッセンジャーという、日本人選手以上に日本の野球のことを理解した、素晴らしいお手本がいるではないか。」

「なぜメッセンジャーがこれだけ勝てるのか。勝てるピッチャーになるには、普段からどんな練習に取り組めばいいのか。その練習によって何が得られるようになるのかなど、メッセンジャー本人に逐一聞けばいい。そこから得られるものは、ひょっとしたら阪神のコーチよりたくさんあるかもしれない。」と当時阪神の右のエースとして活躍していたメッセンジャー投手を見本にするよう促し、そういった姿勢が見られない藤浪投手に「なぜ藤浪は頑なまでにこういう態度をとってしまったのか。

 ピッチングコーチのアドバイスが合わないということを差し引いても、入団1年目にしかるべき「人間教育」を施していなかったことに尽きる。「自分1人でうまくなった」「自分の力で勝ってきた」、そう誤った考えを起こさないようにするためにも、謙虚さや素直さを持つことの大切さを説き、正しい方向に歩んでもらう。そうしたことを、プロの世界に入った間もない段階で教えるべきだった。」とコメントしていました。

まとめ

 落合氏、金本氏、野村氏、能見氏はそれぞれ、藤浪投手の意識と練習量の改善についてのお話をされていましたが、その中に必ずメッセンジャーの名前が上がっていました。

 メッセンジャー投手は投げ込みと走り込みを大切され、外国人ながら阪神タイガースで長く先発投手として活躍され、藤浪投手の最高のお手本になる可能性は十分にあったと思います。

 この事から、現代野球は効率の良いトレーニング、データ、映像解析により、技術の再現性が容易となり、投げ込みや走り込みが嫌われる傾向にあり、フォームを固める事や技術の再現、筋力の強化を反復練習から身につける考えは薄くなった印象を受けます。

 過去の過度な走り込み、投げ込みが取り上げられ、このような反復練習が蔑ろにされている現状も多少見られ、さらにそのような練習メニューは悪とされる風潮もあります。

 そういった中、落合氏や能見投手、メッセンジャー投手は走り込み、投げ込みを大切さをお話しされており、野村氏はそういった過去の成功者、経験者に耳を傾ける大切さを説いています。これは藤浪投手だけに言える事ではないと思いますので、これからの世代に向けて、新たなトレーニングのあり方について、さらに見つめ直すことが大切になりそうですね。

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