今後の少年野球の在り方と練習メニュー 負担のない大人も子供も充実した野球ライフ

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野球の競技人口の減少 今後の少年野球の在り方と練習メニュー 負担のない大人も子供も充実した野球ライフ

 昨今、少年野球の競技人口の減少と伴い、野球離れが顕著になってきました。公園で気軽に球技が出来ないことや、道具を揃える事が難しいなどといった理由から子どもたちが野球に触れる機会が少なくなりました。実際に野球チームに入ると保護者の負担も大きく、送り迎えやお茶当番、審判やグランド整備などといった役割で拘束され、土日も子どもの野球で1日を潰されるという事は珍しくありません。このような要因から野球というスポーツはハードルが高いスポーツとなり、他のスポーツと比べて取り組みづらい競技になってしまっています。この状況を打破するために少年野球も新たな工夫とチームづくりが求められ、子供も大人も負担のないスポーツになっていく事が必要になります。今回は野球の少年野球の課題と今後の在り方について考え、野球を楽しむためにどのようなチームづくりをしていくべきか考えたいと思います。

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少年野球の課題

練習時間

 野球は9人で行うチームスポーツであるため、守備練習にしてもバッティング練習にしても、どうしても待ち時間が増えてしまいます。 

 守備練習にしても9つのポジションに順番にノックを打ったり、バッティング練習にしてもせいぜい2箇所で行い、その間は自分の順番が回ってくるまで待たないといけなくなります。そのため練習時間はどうしても長くなってしまい実際にボールに触れて、「打つ、投げる、守る」の動作を行う時間は僅かなものになってしまいます。この課題はチームスポーツ特有のものになり、他にも連携やサインプレーの練習に時間を割いてしまうと時間の割には参加できる人数は少数になってしまいます。

 野球のレベルが上がるにつれて、このような緻密なプレーの完成度というものは求められますが、少年野球においては、とにかくボールに触れて、「打つ、投げる、守る」という動作を数多くこなし、野球を楽しみながら個人の能力を伸ばすという事が第一優先になると思います。

 また、従来の練習メニューの中で選手全員に平等に練習機会を与えると時間がいくらあっても足りなくなります。この事から選手の待ち時間をなくすという事を念頭に置き、ケースバッティングやシートノック形式に拘らず、ロングティーやショートスローによるバッティングなど、ひたすらバットを振り続けるということが大切になると思います。

 守備練習にしてもキャッチボールを大切にして、塁間の距離でそれぞれ課題を持ってスローイングをしたり、マウンドの距離でピッチャーのフォームで正しく投げる練習をしたり、ノックもシートノック形式ではなく、初めは近い距離から何グループに分け、ひたすらゴロやフライを捕る練習を設ける事が大切になります。ケースバッティングやシートノックといった全体練習は大会前や試合前に確認作業、準備として行うべきものであり、それ以前に選手個人の技術の向上を目指し、楽しくボールに触れてもらうという事が何よりも大切になると思います。

 効率よく、選手全員が練習をこなすことで練習時間も短縮でき、キャッチボールをする、バットを振る、打球を捕るという事を日々継続するだけで少年野球においての練習は十分になるのではないでしょうか。

ポジションの固定は可能性を狭める

 野球は9つのポジションがあり、選手それぞれの特性に応じてポジションが割り当てられます。少年野球で言うと肩が強い子はキャッチャーかピッチャー、背の高い子はファースト、小柄の子はセカンドやライト、比較的肩が強くて動ける子はショートやサード、足の速い子は外野などというように、子どもの時点でチーム事情や大人の一存でポジションが確定してしまいます。

 この事が決して悪いということではなく、こういったイメージでポジションが固定されてしまい、子ども自身が守りたいポジションに挑戦したり、練習の機会を失ってしまう事が懸念される側面があります。子どもの成長は著しく、発達により少し体型や身長が変わるだけで、身体能力も大きく変化します。そのため、小学校時代にピッチャーをやった事がない子が中学、高校でエースになる事も珍しくなく、逆に小学校時代、エースだった子が全く別のポジションを守るということも大いにあり得ます。野球はポジションによって動き方やこなし方が変わるため、一つのポジションしか経験できないという事は選手の可能性を狭めてしまう可能性があります。

みんな最初はピッチャーとショートを経験する

 このような事が起こらないようポジションを多少は流動的にあまり固定するということに拘らないという事はとても大切です。

その中で必ず1回はピッチャーとショートを経験し、練習を重ねて頂きたいと私は思います。

ピッチャーを経験するメリット

 ピッチャーの投げ方はスローイングの基本となり、正しい投げ方を身につけるために非常に有効になります。逆にいうとピッチャーの投げ方を正しく習得しないと野手としてのスローイングも正しく行えず、肘や肩への負担となり故障にもつながってしまいます。怪我の予防のためと正しく強いボールを投げるために、少年時代からキャッチボールを大切にして、正しい投げ方、投球フォームを身につける事で今後の野球人生に大きく生きると思います。

ショートの基本動作とは

ショートは野手のゴロ捕球から送球までの基本動作の要素を多く含んでいます。ショートというポジションからファーストまでは距離があるため、正しいフォームでスローイングをしないと送球が届かなかったり、ボールが逸れてしまいます。また正しいスローイングをゴロ捕球の動作と連動して行うという経験が野球のどのポジションにも共通して大切となります。

この2つのポジションで共通する事はどちらもキャッチボールを基本にしているという事です。キャッチボールの内から正しい投球フォーム、スローイングを身につけて、次の段階でマウンドからホーム、内野からファーストの距離を強く投げる事を意識し、技術を習得する事で、今後どのポジションを守っても生かすことができます。

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2つのポジションを経験して野球を楽しむ

 このような目的を持ち、一度ピッチャーとショートを経験、練習して基本動作を身につけてから、選手それぞれの個性や能力、体型などを分析、配慮し、試合においてのポジションを決めていくという事がとても有効になると思います。

 そのため、練習メニューもピッチャーとショートの練習をするだけの日があっても良いかと私は思います。野球教室のように、投げ方やゴロの捕り方を一つひとつ確認して、どうしたら怪我がなく強いボールを投げられるか、ゴロ捕球からスムーズに正確なスローイングが出来るか指導者と一緒に検討し、野球の基本を学び、反復していくことが一番大切になると思います。

 また、ピッチャーとショートは野球というスポーツの中で花形と呼ばれるポジションとなり、誰しも一度はショートやピッチャーをやってみたいと思う時はあると思います。少年にそういった機会を得てもらい、少しでも野球の楽しさに触れてもらうという事もこの方法の大きな目的にもなります。

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まとめ

 以上のように少しでも野球の醍醐味に多く触れてもらい、やりがいを大切にして個人の能力を伸ばす事を目的に練習時間を短くする事が野球と長く付き合っていく中で、子供も保護者も負担にならない方法になるのではないかと思います。

 また練習時間を半日で終わらせる事で、残り半日を家族に時間に当てる事ができたり、他の習い事、スポーツを経験する時間にも使えると思います。幼い頃から様々なスポーツに触れることで、発達や身体能力の向上、野球の動作に生きる事も考えられ、また子供の可能性を広げるきっかけにもなると思います。チームに縛られる事なく、子供や保護者が自分達のために時間を使えるという事は、充実した人生を送るためにとても大切な要素です。

 ぜひ野球界のためだけではなく、子供も大人のためになる楽しいスポーツであってほしいと私は思います。

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